給特法を廃止したら働いた分だけ残業代が支給されて、労働環境が改善されると考えている方が予想以上に多いのかな?という印象を持ちました。しかし、これには誤解があり下手をすると落とし穴に陥る可能性を感じましたので、私なりに整理をしてみました。


労働基準法と36協定

給特法を廃止したら教員は労働基準法を拠り所に働くことになります。労働時間を例として挙げると、1日8時間、週40時間を上限とした労働となりますが、使用者側と労働者側が協定を結ぶことによって残業が可能となります。

必ずしも協定を結ぶ必要はありませんから、協定を結ばなければ1日8時間、週40時間を上限とする労働となります。教員の労働時間が7時間45分であることから考えると1日15分、週に1時間15分程度の残業(残業手当支給)となるわけですね。


36協定は万能か?

では、残業することを前提に置くと、給特法を廃止し36協定を結べば良いのかというと、それも一筋縄ではいきません。協定は一人ひとり結ぶわけではありませんから、事業所(学校)の過半数の賛同で一律に結ばれます。
この場合、育児や介護をされている方が定時帰宅したくても残業を命じられる場合があります(拒否できる場合もありますが...)。また、他の人でも定時帰宅したいというときに残業を命じられた際、特例を除き拒否することができないというのが法律専門家の解釈となっています。下手をすると分限処分の対象となる可能性さえあります。

参考までに、現行の給特法ではいわゆる超勤4項目以外は残業を命じることができませんので、育児や介護をされている方、その他の方も少なからずこの法の恩恵を受けている方はいらっしゃると思います。

残業を命じられたくないという方々のことを考慮すると協定を結ばないという選択もあります。この場合は、1日8時間、週40時間を超えて労働することはあり得ないことになりますから、残業手当も必然的に所定の時間を超えた分は存在しないことになります。


給特法廃止は残業代支給につながる?

多くの先生方が、働いた分の対価として残業代が欲しいと考えていると思います。そうすれば、むやみに残業が生まれず仕事も減るだろうと考えているかもしれません。しかし、それは36協定を締結した場合に限られます。
しかし、36協定を結びたくないと考える方々も少なくないというのが私の印象であり、このような方々のことを考えると36協定は結べなくなり、働いた分の対価として残業手当が支給されるということもなくなってしまいます。

もちろん、教員は特殊な働き方であるということを考えると、新しい法律を定め細かく規定することで、多くの教員が快適に働くことができるかもしれません。
ここで整理したかったのでは、教員の長時間労働が給特法の廃止で改善されるかという点で、ちょっと違うのではないかなあということです。同時に給特法が長時間労働につながっているという論理にも私は懐疑的です。
長時間労働の改善に向けては、現在係争中の埼玉県教員超勤訴訟が大いに参考になります。何が長時間労働につながっていっているのか、別の機会で整理していきたいと思います。


【注意】
私の企業での経験を含め、個人的調査、個人的見解を踏まえての情報です。その点はご理解ください。