教員の長時間労働を改善するために、給特法を廃止し働いた分の残業代を支払って欲しいという論調があります。これはこれで合理的な考え方ではありますが、給特法が廃止されたからといって、すぐに残業代が支払われるわけではありません。残業代が支給されるまでの条件整備が必要であり誰かが行わなければいけません。


給特法でも労基法でも働き方は変わらない

給特法が廃止され、労働基準法(労基法)が適用されるようになると仮定しましょう。そうすると、1日8時間、週40時間が上限の労働時間となります。
この上限以上の労働は法律的に認められていないわけですから、必然的に使用者も基準を超えて労働させることはないでしょうし、基準を超えた分の残業代の支給もあり得ないことになります。
実は、この働き方は現在の給特法と同じで校長は残業を命じることができませんし、基準を超えた労働はあくまで自主的な労働と捉えられるのがオチです。


労基法適用なら労使交渉が必須

ただ、実際にはこんなに単純な話ではありません。
現在の教員の働き方を考慮した場合、実際に時間外労働が発生することは間違いないわけで、ここで使用者と労働者の交渉が始まるわけです。

労基法は労働者の権利を尊重し、労働者の権利を労使交渉によって担保されるような仕組みを取っています。ですから、給特法が廃止され労基法に準じて働く際には、労使交渉が存在することが前提となります。


校長との交渉は避けられない

念のための確認ですが、学校における労使交渉とは何かというと、校長と教員が話し合いを持って労働条件について合意をとっていく交渉が行われるということです。教員ひとり一人が交渉を行う必要はありませんが、代表者に託すとしてもすべてお任せとはいかないでしょうから、少なからず交渉に関与していく必要があろうかと思います。場合によってはタイトな交渉となる可能性もありますし、育児や介護、病弱であったり事情を抱えた教員など、教員全体の利益になるよう配慮した交渉も必要になってきます。

つまり、自分の労働環境は自らが校長との交渉に関与しながら整備していくことになります。自分が理想とする労働環境を勝ち取りたいのであれば、自らが汗を流す必要があるわけですね。


今こそ校長と交渉し、労働環境を変えればよい

結局は自分の労働環境は自分で整備していかなければなりません。これは今もこれからも変わらないでしょう。誰かが整備してくれるものと安易に考えている人がいるとしたならば、労働者の権利が確立されてきた歴史をお調べになってみた方がよろしいかと思います。
また、教員の待遇がこれまでよいものになったのは労働組合の方々の献身的な働きによるものです。長時間労働の改善に向けて、労働組合に過度な期待をされている方も少なくないと感じます。しかし、労働組合に所属されている方は、おそらく労働環境は自分で創っていくものという認識を持っておられるのではないかと思います。現に、給特法は残業をせずに済む法律なわけですから。

重要なことは、自分で声を挙げて他の教員を巻き込みながら労働環境を変えていこうという意識を持つことです。もし、誰かが変えてくれると考えているのなら、あまりにも都合の良いことだと認識すべきでしょう。