なぜ、改竄や改竄指示が起こるのか?の原因を考えてみます。

前提として、現行法上では残業手当等の予算執行の必要性はありませんから、予算面の制約から生じる不正ではないことはあらかじめ明確にしておきます。

  1. 時間外労働の数値が自治体ごとに公表された場合に、上限数値を超過していれば世間体が悪くなったり議会等に指摘を受けるため、これを避けるために不正が行われた。

  2. 時間外労働の上限数値はあるものの担うべき業務の履行に重点が置かれるため、労務数値の管理を軽視し不正が行われた。

  3. 残業時間として申告された時間が、真に必要な業務であったが不明瞭で、教員間でも認識が曖昧で自主的労働分も計上されている可能性があるので、杓子定規的に数値の不正が行われた。

考えられる原因は他にもあるでしょうし、いろいろな要素が相まって不正が生じたと考えるのが一般的ですから、そのいろいろな要素を挙げていった方が、原因を考えるには近道かもしれません。
ただ、いろいろな要素を考え始めるとキリがないと思いましたので、上記の3つぐらいを挙げてみました。

上記の3つの理由も独立しているものではなく、含まれている要素が絡み合っている可能性もあります。ですから、それぞれを単独視せずに複合的に見ることが大切だと思います。
とは言ってみたものの、ハッキリ言って私は上記の3つすべてが絡み合って生じたものだと想像しています。

社会からの要請により、時代とともに多くの業務を担うようになった学校は、もはや通常の7時間45分の勤務時間で業務が終わるような職場ではなくなりました。しかし、法律上、学校長は残業命令ができませんから、善意で残業をしてくれる教員を重宝するようになります。また、地域住民や保護者、さらには地方議会から学校の教育力の向上が求められるようになりました。このような背景から学校は業務の縮減どころか、四面楚歌状態で業務が累積していくこととなり、学校の現場も残業が慢性化し労務管理が麻痺したまま時が流れていくことになります。

そこにきて、残業の上限規定が入ってきます。行事の精選や業務の効率化によって残業時間の削減はできるかもしれません。しかし、行事の精選は地域住民や保護者、ひいては議員まで巻き込んで大事になることを学校は恐れています。そして、業務の効率化は進められる教員とそうでない教員に分かれます。また、学校組織として取り組まなければ効率化できないものも存在します。効率化するための予算やツールが不足しているのも事実です。

このような状況下で、残業の上限規定に遵守するための策に窮しているというのが区市町村の教育委員会や公立学校ではないでしょうか。その苦肉の策として行われてしまったのが労務数値の改竄です。

残業時間の上限規定ができたことは前進したと感じていますが、その実現は前途多難です。公立学校は将来に役立つ学習を提供する場であり地域住民から期待される存在ですが、その双方で重い荷物を背負わされた状態にあると感じます。
①学習活動の精選、②地域住民の要望の制約、このふたつが同時に行われない限り、残業の上限規定は理想論に過ぎず、もしかすると労務数値の改竄は至る所で起こるような気がします。
最悪なのは、労務数値を改竄を防ぐために、残業の申告をする教員に過度な数値管理を求めるなど、逆に負担を増やしてしまう結果になりかねません。

今回の提起はこれで了としますが、別建てで考えていきたいと思います。